社員の育成に外部コンサルタントや研修会社を活用している企業は少なくありません。しかし、費用のかかる外部業者を使ってトレーニングを行えない企業もあります。また、最近では「教育は内製化する」という声を数多く耳にします。今回の営業論考では、研修の内製化のポイントについて考えたいと思います。
□新人研修は実践で使えるのか?
営業部門へ配属されるケースで考えてみましょう。新卒の営業担当者は、営業マナーや社内規定、コンプライアンス等の研修を受け、営業部門に配属されます。そこで彼らを待ち受けているのはOJTです。「とにかく回って名刺を集めてこい・・・」「度胸試しの為場数を踏んで来い・・・」など、実践で「鍛える」スタイルの企業がまだまだ多いのも事実です。この場合、マナーは学んでも営業の仕方を学ばずに、現場に放り出される事になります。確かに、飛び込み営業をさせて度胸を付けさせるのは良い事ですし、精神的に強くなる新人営業担当者もいるかもしれません。しかし、まだ右も左もわからない新入社員にとって、この度胸試しは相当辛いに違いありません。新人営業担当者300名に調査したところ、最初の数か月や研修期間で「営業担当を辞めたくなった」「ほかの部署がよい」と感じている担当者が69%にも達していました。ではなぜ新人営業担当者はそこまで追い込まれてしまうのでしょうか?当社の調査によると、主な要因は下記の通りです。
1位:門前払いや顧客の冷たい対応
2位:自分のやっている事が正しいかどうかわからない不安
3位:上司や先輩の無関心、フォローの無さ
このアンケート結果によると、顧客の反応だけではなく「やり方がわからない」「上司がフォローしてくれない」といった自分自身、社内に関係した要因もある事がわかります。この不安や孤独感を払拭しない限り、新人のモチベーションの低下や離職を避ける事はできないでしょう。マナー研修や社内規定、コンプライアンスの理解だけでは、十分な社内研修とは言えません。
□社内研修担当者の存在価値
では、社内で研修担当者の役割とは何でしょうか?新卒や中途の新入社員に対する感情的、精神的配慮が重要です。「すべき事」を伝えるだけではなく、「なぜ行うべきなのか」理由を伝えましょう。個人の意見を尊重しつつ、実行する事の価値を伝える事で、深い動機づけを得る事ができます。スキルだけの営業研修ではなく、この会社で働く、この部署で働くことの意義や、仕事に対する動機づけを明確にできるような精神的な面での教育が重要なのです。
行動することのメリットと同時に、行動しない事のデメリットも伝えましょう。具体的な結果をイメージする事で、理屈ではなく心から行動するきっかけを掴むことができるからです。先ほどの新人営業マンへのアンケートからわかるように、まだ何もわからない状態で社会のあら波にさらされ、肉体的にも精神的にも厳しい状況を経験します。そうしたダメージを最小限に抑えるべく研修担当者は仕事のあり方と、その仕事の有意義さを教え込む事が必要です。
これは営業部門に限った事ではありません。どの部署、どんな業務でも、全く落ち込まずに高いモチベーションを保ち続ける事は不可能です。壁に必ずぶつかり、悩み成長していく事でしょう。その第一段階として、悩みや課題をどう打破していくのか、なぜ落ち込んでもやり切るべきなのかを伝えましょう。粘り強さを教える事が教育担当者の真の役割なのです。
□最近の新人営業担当者の傾向
最近の新入社員は、非常に頭が良く従順です。そのため、言われたことを、言われた通りに行う事がミッションになってしまう危険性があります。手段と目的を混同し、「言われた通りやった」という自己満足で仕事が完結してしまうのです。他の人から学び、協力してもらう事が苦手なので、問題を自分だけで考え処理してしまうことで、大きな問題に発展したり、手遅れになったりするケースも少なくありません。そうした傾向を理解し、上司が細かく考え方や行動、取り組みの進捗を把握し、サポートする事が重要です。営業研修は、直属の上司が研修後にどのようなマネジメントをするかによって大きく成果が変わってしまいます。
研修を内製化する場合、実施後のフォローの仕組みを十分考慮した上でスタートさせるようにしましょう。
新人の時、熱い思いで教えてくれた研修担当者の顔は一生忘れません。知識の習得ではなく、粘り強い人材を育成する事を目的として、体系的な研修を実施する事が重要なのです。
あなたの会社の研修は、諦めない人材、やりきる人材、粘り強い人材を育てる内容ですか?
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